ちろりと時おり覗く赤い舌 同時に、響き渡る小さな水音 「……っ…」 ああ、ダメだ。 先ほどから指先に走る感触に、思わず上がった声を、慌てて噛み殺す。 それに気付いたのか、彼の瞳が意地悪そうに笑うのが視界の隅で見えた。 至極楽しそうだ。腹立たしいことこの上ない。 だがその金瞳を睨み返そうにも、 「っ…ぁ…」 電流が身体を走る。びくりと震える、肩。 耐え切れずに上がった自分のものとは思えない声に、自分で恥ずかしくなる。 それでも彼はやめない。 益々楽しげに、その動作を続ける。 私の伸びきった腕、その先で。 生き物のように蠢くのは、彼の赤い舌。 唇を這わせ、噛み付いて、滴る雫を舐めとって。 その指先に走るざらついた感触に、いちいち電流が走ったように反応してしまう自分が恨めしい。 親指、人差し指、中指、薬指、そして小指。 しっかりと彼に捕らえられた指は、順々に彼の口の中へ消えた。 食べられている。そんな形容が似合う光景。 また、湿った音。 これもまた恥ずかしさに拍車をかける。 多分顔は真っ赤だ。 それを知っているからこそ、意地悪な彼の金瞳も更に面白そうに揺らめく。 時おり漏れる吐息が、べたべたになった指先を掠めていく。 見ていられなくて、目を背けた。 (…っずるい…) 私ばっかり感じているなんて。 ずるい、よ ふと床の隅っこに転がっている瓶に気付く。 そうだ、事の発端はこれだった。 瓶に張られたラベルには、Honeyの文字。 最早少し前まで私が堪能していたその甘さは、既に私の口の中から消えてしまっていた。 調子に乗って、指に絡めたままそれを彼に勧めたのがいけなかったのか。 ……ほんの冗談、だったの、に だが後悔する前に、また身体が跳ねる。 小指の先が、やんわりと噛まれた。 纏わりつく吐息。 「 」 ふと聞こえてきた、小さくて、低くて、掠れた声。 ああ、やめて。 そんな優しい声で呼ばないで。 頭がおかしくなりそう。 彼の声が、どこか遠くに聞こえる。 「……甘い」 不機嫌そうな声に反して、瞳はやっぱり憎らしいほど楽しげに笑っていた。 |